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フォトグラファー阿部健「僕の風物詩」第2回「そこにあるもの編」

フォトグラファー阿部健さんの連載「僕の風物詩」、第2回は「モノ」のお話です。スタイリスト・アートディレクター本間良二さんの新たなテーマ、“things on there”。本間さんとの「そこにあるもの」の記録。それはモノとの新しい間合いの発見でもあり、対話のようでもあります。秋も深まるある日、僕はいくつか私物を持って、自身の展示の搬入を文字通り目前にひかえていた本間さんのところを訪れました。

今回撮ったモノ、上の左から右の順に。
 
本間 テープ台。これってきっと、スーパーとかで使ってるヤツですよね?なぜこれが自分の手元にあるのかが思い出せません。何なんでしょう?
 
本間 Fuck hook。なんの前触れもなく、いきなり友人がくれました。これがまた重いんです。ちょっとコワいデザインですが、面白いところにつけたいなぁと、思っています。
 
本間 細かい作業用の万力です。これも年季が入っていて好きな質感です。
 
阿部 スケートボードで擦れている靴ひも。靴ひもには形も色も種類があり、ズボンのベルト代わりにもなるし、軽めの一眼レフのストラップにしている人もいたりと、なかなか便利でお洒落です。ただ、それを見たまわりの反応は、「ひもですか!?」となり、「ひもです」と僕。これはあまりイメージの良い会話ではありませんね。
 
阿部 ぼろぼろの身障者マーク。原付での移動中、車道の隅っこに落ちていたところを発見しました。一旦は通り過ぎたけれど、どうしても気になり、拾いに引き返しました。何かは分かりませんが、大切な物事が詰まっているように感じています。キズや色も奇麗なんです。
 
本間 RAT2。作業場でたまにギュンギュンやりたいときに使ってるエフェクターです。初期のモデルはかなりプレミアがついていますが、残念ながらこれは2番目のモデルです。
 
阿部 ひたすらモノクロフィルムを自分で現像していたのは、僕が写真の専門学校に通っていたころ。暗室の授業の最初の段階で、このリールに35ミリフィルムを巻く練習をしました。フィルムを現像する一連の作業は、今の僕にとっては「余計な手間」ですが、当時はとても好きな作業のひとつでした。使い込みましたが、まだキラキラしています。
 
本間 平テープの先っちょに縫い付けるレザーパッチです。こうして見ると、何だかよく分かりませんね。
 
阿部 スケートボードの板の破片がくっ付けてあるポラロイドは、写真家Jai Tanjuの作品。Jaiは僕が好きな写真家のうちのひとりです。彼は数年前、「僕は住んでいるサンホゼのなかでもかなり低所得者だけど、いつかは有名になるよ」と、よく友人に言っていたそうです。つい先日彼のグループ展に参加させてもらった時、「写真の値段はいくらにする?」と聞かれました。僕はいくつかの理由で、「値段はJaiが決めて、もし売れたらlife workの足しにしてください」と伝えました。彼の答えは、「オーケー。もし売れたらそのお金でビールを買うよ!」でした。
 
本間 工具たち。錆びた工具になぜか惹かれてしまうのは、きっと自分だけじゃないと思います。錆のビジュアルと、手にしたときにずっしりくる重みのバランスが好きです。何なんでしょうねぇ......。

フォトグラファー阿部健「僕の風物詩」第2回「そこにあるもの編」

“things on there”by Ryoji Honma (2-tacs). × Takeshi Abe

PROFILE

阿部 健(あべ・たけし)

1980年、神奈川県生まれ。日本写真芸術専門学校2部 報道・芸術写真科卒業。
複数のカメラマンのロケアシスタントとして働いたのち、平野太呂氏に師事。
2009年からフリーフォトグラファーとして活動を開始。 www.takeshiabe.com