アラスカのトレイルに残された、原始と文明のあわいを表す痕跡たち。

----それまでは、ただ人々は鮭やクジラやアザラシを捕まえて、ベリーの身をほおばりながら厳かに暮らしていただけだったのに、あるときから人は口にすることのできないゴールドを求め山の中に分け入ったのです----（石塚元太良）

たくさんの金脈が発見されたことで、金を求めて大勢の人々が山へ押し寄せたという19世紀末のアラスカ。かつては、金採掘のために切り拓かれた山も、100年以上の時がたった今では、トレイルコースとして親しまれているといいます。森の息づかいの中に、ゴールドラッシュという主人を失い異物として朽ちていくもの。その光景を「森の静寂に同化するようにしてそこにある」と記す石塚元太良。彼が切り取った写真群は、私たちがなかなか目にすることのできない“いま”この時の大自然の風景であるだけでなく、時代から時代へのうつろい、“いま”と“それまで”とはなにか、と、私たちを何層もの思考の旅へといざなってくれます。