モスクワ出身のエレナ・トゥタッチコワ。自然と人間の関わりや文化を通じて“人間の記憶がどのようにつくられていくのか”に関心を抱き、さまざまな地域やそこで暮らす人々のパーソナルな物語を集め、写真・映像・音・テキストなどの表現方法によりインスタレーションを行う新進のアーティストです。トゥタッチコワが初めて手がける写真集『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』が12月中旬に刊行。その刊行を記念し、都内2ヶ所で個展を開催します。

自身の幼少期の記憶をテーマにした本書は、ロシアの美しい自然に囲まれて暮らす、ある兄妹のかけがえのない夏の日々を2009年から継続的に撮り下ろした作品郡を収録。極寒の冬が訪れるロシアで最も特別な期間とされる夏に、子どもたちは、祖父母が暮らす田舎の家や「ダーチャ」と呼ばれる自然の家で過ごす風習があります。いつの間にか陽の光が大地を照りつける夏が始まり、暑さが和らぐ頃にはあどけない少年少女たちも自然の中でひとまわり大人に成長。そんな、ささやかでありながら誰もが経験するであろう心と体の変化を“林檎が落ちる音”という言葉が暗喩しています。本書の刊行を記念し、12月3日（土）より渋谷「nani」にて新作映像を写真作品とともに展示する作品展「In Summer, With My Dinosaurs」を、12月9日（金）より恵比寿「POST」にて写真集の中から新作と代表作を抜粋した作品展「In Summer: Apples, Fossils and the Book」を開催。また、20日（火）は「POST」にて、詩人のぱくきょんみ、須永紀子、乙益由美子らが写真をもとに詩を朗読しながら、トゥタッチコワと写真について語るトークイベントも。懐かしく、記憶の奥にそっと触れるような写真の数々を、この機会にご覧ください。