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映画監督ハンナ・ヘミラ

© 2014 Handle Productions Oy & Pictak Cie © Moomin Characters™

INTERVIEW

映画監督ハンナ・ヘミラ

カバのような風姿がなんとも愛らしい妖精のキャラクター、ムーミン。ムーミンの原作者であり、フィンランドを代表する作家トーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念して、母国フィンランドで製作されたムーミン初の長編アニメーション映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』が、2月13日(金)より日本でも公開される。本作の監督を務め、北欧を拠点に多くの映画でプロデューサーとして活躍するハンナ・へミラに本作について話を聞いた。

ーームーミン初の長編映画だと聞きました。本作『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』が映画化されるまでに、どのような経緯がありましたか?

Hanna Hemila(ハンナ・へミラ 以下、ハンナ) まず、ムーミンに関する映画をつくりたいというオファーは、ハリウッドやアジア、ヨーロッパなど世界各地からトーベ・ヤンソンの姪であるソフィア・ヤンソンが受けていたものでした。しかし、そのどれもが納得のいくオファーではなかったようです。ソフィアとは古い友人なので、「なかなかいいオファーが来ない。トーベ・ヤンソンのコミックに基づいた映画やテレビ番組がつくられていないので、コミックをオリジナルとした作品があればいいのに」という話を彼女から聞いていました。そこで、フランスにいるとても腕のいいアニメーションディレクター、グザヴィエ・ピカルド監督と知人だった私は、彼をフィンランドに招き、そのことについて相談をしたことが製作のきっかけでした。最初にソフィアの許可を得て2分半のパイロット版を製作しました。きちんとキャラクターの組み立てを詰めて彼女に見てもらったところ、OKとなり、今回の映画化に繋がったのです。

ーー監督がムーミンに惹かれる理由はなんですか? キャラクター、ムーミンの魅力について教えてください。

ハンナ 原作者トーベがムーミンの小説を書いたのは1940年代のことになります。当時は戦時中で、トーベの弟さんも戦争に行かれたり、ある意味それは彼女の現実逃避というような作品であったと思います。空爆を受けるなど、多くの悲惨な状況から、“別の世界に行きたい”という願望が生まれ、ムーミンの世界が創造されていきました。この映画の中のムーミンパパのセリフに「平和に生きよう。ジャガイモを埋めて夢を見よう」というフレーズがあります。シリーズを通してムーミンのセリフにも同じようなものがありますが、まさにその部分がトーベのスローガンであり、ムーミンのテーマになっているのです。私自身は、7歳の頃にトーベの小説を読み、ムーミンの存在を知りました。その後、演劇を見たり、私の子どもたちが幼い頃にちょうどフィンランドで日本のアニメが放送されたりと、たくさんの接点がありました。もちろん、トーベのスローガンのような生き方や、その考え方への共感がベースにあります。

ムーミンの認知度調査をしたところ、実にフィンランドの99%以上の人がムーミンを知っているという結果が出ました。トーベの書いた原作の小説でなくとも、日本のアニメかもしれないし、コミックかもしれない。または、画家としての彼女の作品からかもしれませんが、フィンランドの国民は何らかのカタチでムーミンに触れているのです。キャラクターグッズがそこらじゅうに溢れているので、おもちゃで遊んだ記憶がない人はまずいません。本当に私たちの生活はムーミンに囲まれていて、自然にそこにあるものというような存在なのです。そういう意味で、私たちの生活に入り込んでいるものなので、ずっとそばにいる友達のような感覚を持てるところが魅力だと思っています。

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ーームーミン一家の暮らしは大自然の中で成立していて、その生活風景にどこかリアリティを感じます。フィンランドでもこのような暮らしが日々の生活に反映されているのでしょうか?

ハンナ ムーミンが日々の生活に影響を与えたというより、フィンランド的な生き方というものが非常にムーミンのストーリーに影響されていると思います。自然と調和した暮らしや、自然と人間が共存する上で実際に直面する問題などがムーミンのストーリーには盛り込まれています。ただ、より娯楽性を増すためにムーミン一家は、現実に暮らす人々よりもエキセントリックな家族に描かれていますけどね(笑)。

ーーecocolo68号は、クラフト・ワークがテーマでした。そこで、監督が思う“ものづくり”について教えてください。

ハンナ 非常に難しい質問ですね。まず、北欧のデザインというのは、自然がモチーフになったものが多いです。それは、木であったり、石であったり。やはり北欧デザインというものは、手作りのもの、ハンドクラフトに着想を得て根付いていったものがすごく多いんですが、人件費の高騰などのさまざまな問題から、今ではアジアや別の地域でものが作られていくという現実問題があります。とはいえ、私には、やはりムーミンが生まれたフィンランドの文化を大切にし、その文化を次に繋げていきたいという想いがあるので、この映画からもそういった部分を見つけてもらえたらとても嬉しいです。

STORY
ムーミン谷から海を渡り、南の島へバカンスにやってきたムーミン一家。目新しいものが建ち並ぶ街にわくわくしながら高級ホテルに辿り着いた一家は、そのままホテルで生活をスタート。はじめてのゴージャスな暮らしにすっかり翻弄されてしまう、フローレンとムーミンパパ。一方で、そんな暮らしに慣れないムーミンとムーミンママはふたりに嫌気が差し、ホテルを後にすることに......。ムーミン一家が、遠い南の島で見つけた"家族像"が描かれた心温まるストーリー。

INFORMATION

『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』

監督: ハンナ・へミラ、グザヴィエ・ピカルド
WEB: moomins-movie.com
配給・宣伝: ファントム・フィルム 2014年/フィンランド/77分

2月13日(金)より全国ロードショー

PROFILE
ハンナ・へミラ/フィンランド生まれ。映画監督・プロデューサーとしての彼女のキャリアは、第64回カンヌ映画祭に出品され国際批評家協会賞を受賞した『ル・アーヴルの靴みがき』(アキ・カウリスマキ監督)のラインプロデューサーを務めたことで一躍有名となった。また、数々の賞に輝き世界的に有名となった家族ものの長編映画『ペリカンマン』(リーサ・ヘルミネ監督)でもプロデューサーを務める。その他にも、数多くのドキュメンタリー映画、アニメーション映画、さらに各国合作の長編映画の共同プロダクションに携わっている。