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OOIOO/YOSHIMIO

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文:渡辺マキコ

INTERVIEW

OOIOO/YOSHIMIO

OOIOOの4年ぶりの新譜『GAMEL(ガムル)』は、伝統楽器ガムランを全面にフィーチャーした意欲作。より色彩感を増した緻密なサウンドスケープに、現代的な電子音やノイズを織り込んだ音のタペストリーは、国や時代、次元までも超えて旅をする最新型のエスノ・ミュージック。新作について、全国4カ所でのリリースライブを終えたばかりのリーダーYOSHIMIOに話を聞いた。

ーーリリース当日(11/22)に行われた渋谷WWWのライブに伺いました。DJ NOBUやプリミ恥部(宇宙マッサージ)など、異次元の音と光が混じり合う、ディープな音空間が印象的でした。ライブツアーはいかがでしたか?

YOSHIMIO 今までもそうなんですが、リリースに合わせてがっつりレコ発ライブツアー的なことをしたことがなくて。今回もこじんまりやりたくて、何故だか。やっぱりライブは、ライブがしたい!という衝動がある時にやりたいので。さらに今回は自分が関わってるレーベルSHOCKCITYからの自主出版なので、これはライブで手売りしなきゃ、と思いまして(笑)。11/22に新しいアルバムを出そう!と、いうのも根拠はなく、自分が覚えやすい日にちってだけで決めて。でWWWに聞いたら、すでに恥部ちゃんやDJ NOBUくん、レーザーのYAMA-CHANGのニューシャンバラ(ディ)ってイベント入ってましたが、みなさん快くそこに入れてくれたんですね。もともとあった企画にね......(笑)非常にありがたかったです。

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ーー地方ごとにジャンルもさまざまな内容になりましたね。洋服ブランドアート、フードとのコラボもあって、ゆかりのある人達が集まった印象です。

YOSHIMIO 大阪では、古くから友人のブランドCOSMIC WONDERのインスタレーション中でライブをしたんですが、ちょうど絵の展示のために来日していたHisham Bharoocha(BOREDOMSのドラマー)の音楽名義であるSoft Circle、旧友のDJ YA△MAにも参加してもらい。『GAMEL』の中ジャケや盤面を書いてくれた大井戸猩猩の絵の展示もしましたが、その現物の絵が凄すぎて! 最後の京都は友人のジム・オルークのバンドと同志社大学の学園祭に出演したり、とても大切な人達とイベントを作り上げられて、めっちゃ楽で楽しい流れでしたね。

ーーニューアルバムについて伺います。前作『ARMONICO HEWA』(09年)リリース後、ここ3年くらいガムランを入れたライブを多数行ってきましたが、そもそもガムランのコンセプトはどこから始まったんですか?

YOSHIMIO 07年にCenter for COSMIC WONDERでのイベントで音楽を頼まれて、HamaとKoheyを誘ってYOSHIMIO with GAMELANって名前でライブしたのが出会いです。ちょっと彼らと即興演奏したらどんなんかな?と思って。この時Koheyに、「ガムランを自分の楽器として自由に演奏して行こう! と目標を持ったのは、OOIOOの3枚目『GOLD&GREEN』を聞いたのがきっかけです」と聞いて、これは話早そうだな~と思って(笑)。

ーーガムランが入ることで、ミニマルなリズム・アンサンブルが加わって、一つのトライブのような独自のビートに、きらめきや祝祭感が増したように感じました。具体的には、どんな発見や変化がありましたか?

YOSHIMIO 安定感がでましたね。ロックバンドのフォーマットの上に、ポンととってつけたような民族楽器の関わり方は絶対避けたかった。これまでOOIOOのリズムはタペストリーの横糸で揺らぎまくってて、船酔いするようなとこがあって。そこを正すのではなく、これに見合った面白い縦糸になるリズムを模索していて。縁の下ではなく、きらきらとした高音のリズミックなメロディーのある縦糸。ガムランのリズムはタテノリな感じもあって、メロディーのBPMは揺らしつつ、リズムの響きを反対の指で押さえるという、人間機械みたいな職人技のところもあり、民族音楽の枠ではない音楽ができると思った。“NEWなWAVE MUSIC”というか。

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ーー曲作りはどのように? やはりライブを重ねる中で練られていったんでしょうか。新曲と、既存を再構築したものがありますよね。

YOSHIMIO 毎回、ライブ前のリハでかなり練りました。ガムランは西洋音階ではないので、ガムランの持ってる音をOOIOOの中に当てていく作業をたくさんしましたね。新曲は今まで通り作りましたが、ガムランに合わせてメロディーを変えたものあるし、既存でも全く変えなくてもぴったり合う曲もたくさんあった。もともとOOIOOがそういう音色をしてたのかも...。

ーーレコーディングはいかがでしたか? アルバムとしてまとめるにあたって、何かイメージはありましたか。

YOSHIMIO イメージはどこまでガムランの響きをのばすか......どこまでものばせるんで、その響きの長さをイメージしながら。「響きは光」だと思って。3日間で11曲、もうやり直し無しで、ライブで演奏するように録音しました。普段はトータル1ヶ月はかけていましたが、MIXも4日間、マスタリング1日と素早かった。

ーー今回はレコーディングエンジニアにZAKさんを迎えていますね。

YOSHIMIO その「響きは光」とすぐ理解できるのがZAKで。わたしがレコーディング始める前の秘密のメモ見て、「よしちゃん、わかったよ!」と2人ともそこで出来上がり、すでに聴こえてました(笑)。あとは、2人でかりんとうぽりぽり食べながら録音してMIXしてました(笑)。これまで私は、もの凄く神経質に音の粒を見ていて、ライブ録音をひとりでオーバーダブして、アレンジして......とやっていたんですが、そこが今までと随分違うところ。ZAKとだからそうなったと思うんだけど、今回ほど適当に素早くやったことはなくて、ほとんどインスピレーションのみ。インスピ録音。

ーー完成してみて、いかがですか?

YOSHIMIO うーん。ガムランというすごく重たい濃厚な古典楽器とOOIOOがわざとらしさのかけらもなく同居したことは、今回のレコーディングで何かひとつやり遂げたように思ってます。

ーー複雑な要素が交わる色彩豊かな内容とは対照的ともいえる、シンプルなジャケットも素敵ですね。

YOSHIMIO ジャケはわたしのOOIOOと書いた落書きをGOTO SHOJIがデザインしてくれました。 OOIOOを知らない人にも民族楽器の香りを臭わせたくなくて(笑)、ノーカテゴライズなもので、手に取った人に何か今までのOOIOOとは違うと思ってほしかった。でも謎のまま聴いてみたら、説得力のあるノーカテゴライズな音楽が入っている! という。訳がわかるものにはあまり興味ないし、なんだこれ? って常に思いたい。ずーっとパッケージ含めてモノ作りをして、面白がりたいですね。

ーー今後もガムラン編成は続いていくんでしょうか。それとも今回限りのコンセプトアルバムとしての位置づけなんでしょうか? 今後の展望があれば、教えてください。

YOSHIMIO わからないです。なににも束縛されたくないので、今の時点で決めたくないし、バンドに関して決めて行動したことはないです。来年はOOIOOひさびさのアメリカツアーに出かけようかな、と思ってますが、具体的には決まってません。個人的には自分のソロ・ワークというか、やっぱドラムを自由に叩こうと思い、最近のYOSHIMIOLAYABI(AyA、Aiとのユニット)、KIM GORDON(ex.Sonic Youth)のギターとのデュオ、MORI IKUE(ex.DNA)とのツインドラムも引き続きやっていく予定。とはいえ、タイミングがすべてなんで、なにが起こるか自分でも楽しみです。あと、YOSHIMIOLAYABIの予定は、バンド名を変える、ってことです(笑)。

INFORMATION

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『GAMEL(ガムル)』OOIOO  ¥2,300(税抜)| Shock City

インドネシアに伝わる伝統楽器=ガムランを全面にフィーチャーした、通算6作目となるニューアルバム。トライバルなビートや有機的なハーモニー、さまざまな言語や造語を組み合わせた独自の歌詞など、これまでOOIOOが培ってきた強烈な「訛り」を継承しつつ、新たな次元へと進化。ロックの直線的なビートを抑え、ガムランの繊細なリズム・アンサンブルを加えることで、複雑なテクスチャーとハーモニーに満ちた、優しく懐かしい肌触りを持つサウンドに仕上がっている。原始も未来も、あらゆる境界を自由に往来する、色彩豊かな音のタペストリー。

OOIOO(オー・オー・アイ・オーオー)/YOSHIMIOを中心に、1995年に結成された架空のアヴァン・ロックバンド。現在のメンバーはYOSHIMIO(Vo/G./Key./T.p.)、KAyAN(G./Vo.)、AyA(B./Vo.)、OLAibi(Dr./Vo.)、Kohey Sai(Gamelan)、HAMA(Gamelan)の6名。以来様々な音楽的変遷、メンバーチェンジを経て、過去5枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。ooioo.jp

YOSHIMIO/25年以上にわたり、BOREDOMS、Kim Gordon等とのFree Kittenやデュオ、インド伝統楽器との即興演奏バンドsaicobabaなどで活動。あらゆる楽器を駆使するマルチ奏者として世界中で活躍するほか、ソロ名義での音楽制作、自身のブランドemeraldthirteenでの服飾デザインまでをもこなす多層型アーティスト。