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イギリス仕込みのシンガーソングライター<br>annie the clumsyとその仲間たち

写真:渡邉まり子 文:中野由佳

INTERVIEW

イギリス仕込みのシンガーソングライター
annie the clumsyとその仲間たち

友人たちのおしゃべりのような親しみやすさ。フォーキーな哀愁漂う歌声。熱すぎず、クールにもならない絶妙な温度で、女心をウクレレにのせて奏でるシンガーソングライター、annie the clumsy(アニー・ザ・クラムジー)。過去の自主制作盤はトラックメーカー、tofubeatsがアレンジャーとして参加し、1stアルバムはノーナリーブスの西寺郷太が主宰するレーベル「GOTOWN RECORDS」より発表。CM楽曲の制作や歌唱に参加するなど、その天性の歌声とグルーヴは既に多くのフォロワーを集めています。今年7月には、最新アルバム『Inside Her Fancy Brain』を金沢のインディーレーベル「Rallye Label」からリリース。80年代のTV番組を彷彿とさせる愉快なミュージックビデオ「Let's Dance Whoo」からも感じられるように、ますます表現力に磨きがかかるアニー・ザ・クラムジーの素顔を覗いてみました。

——まず始めに、アニー・ザ・クラムジーの活動の出発点を教えてください。

annie the clumsy(以下、アニー) 音楽を始めたのは高校を卒業して、イギリスに留学した時です。実は、映画『ハリーポッター』が大好きで、その舞台であるイギリスで演技の勉強がしたいと思い留学を決心しました。でも、現地でイギリス人の彼氏ができて(笑)。彼の家族はミュージシャン一家で、フェスティバルにも出演するような人達だったので、そのコミュニティーに溶け込むうちに、自分も楽器を演奏したいと思うようになりました。最初はギターに挑戦したけど、難しくてすぐ挫折(笑)。そんな時、YouTubeでウクレレを弾く人の動画を発見して、「これならできそう!」ってひらめいたんです。人の曲で練習したら割と簡単だったので、今度は自分の曲を作ってみようと思って。よくある恋愛をテーマにした曲は退屈だなと考えていた時、たまたまニュージーランドのバンド「Flight of the Conchords」を知って、衝撃を受けました。彼らはいわゆる"コミックバンド"で、どんなことも歌にしちゃう。映画やコメディの要素が音に合わさっていて、自分のそんな楽曲がつくりたいと徐々に方向性が見えてきました。

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——確かに、アルバム『Inside Her Fancy Brain』を通して聴くと、映画を一本観終えたような感覚になります。映画と言っても、長編の大作ではなく、ひとりの女性の身のまわりを描いた等身大のショートフィルム。それは、リスナーが自分や身の回りの人を投影できる、等身大の世界ですよね。そこに少しだけファンタジックなムードも内包しているところが、好奇心をそそられます。

アニー 映画とネットサーフィンが好きで、妄想が得意だからかな(笑)。サントラを聴くのも好きで、特に『500日のサマー』と『JUNO』のサントラは名盤ですよね。サントラを通して知った、レジーナ・スペクターやShe&Himにはかなり影響を受けていると思います。実は私、ライブを観に行ったり出演したりするのは得意ではないんです。曲づくりも家でしかしないし......。ネット世代ですね(笑)。外に出なきゃとも思うけど、SNSのお陰で国境を越えてやりとりできるし、昔知り合った人がカメラマンとして活動しているのを知られたり、良いことも多いです。

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▲ 左:イギリス留学中はミュージシャン仲間とジャムセッションをして過ごす日々。 右:滞在していたイギリス北東部の街、クリーソープスにて。

——アルバムジャケットのイラストを手がける、Nozomi Takayamaもネットを通じて知り合った友達なんですね。

アニー そうです。私のブログを彼女が見てくれたことがきっかけで、知り合いました。それまで絵に興味がなかったけど、彼女が送ってくれたzineを見たりしていたら、いつの間にか彼女の描く絵の虜になりました。最初に作った自主EPのジャケットを依頼したら、その仕上がりもばっちりで。そこから1st、2ndジャケットも描いてもらったし、私の物販のT-shirtも全て彼女のイラストを使用させてもらっています。彼女なしでは私のアルバムは成立しないくらい大事な存在で、annie the clumsyの一部だと思っています。リリースパーティーの時は絵の展示もお願いして、とても好評でした。あと、2ndアルバムでは、イギリスで映画やCM楽曲を制作している友人のLewis Heenanにもアレンジャーとしてサポートしてもらいました。彼は、annie the clumsyの影武者的な存在です。

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Nozomi Takayamaが手がけたジャケットワーク。上から、EP『Annie the clumsy vol.1』のジャケット、1stアルバム『from my messy room』、2ndアルバム『HER FANCY BRAIN』、フライヤー。

——歌詞はすべて英語ですよね? 日本語ではなく英語で歌詞を書く理由は?

アニー 日本語で書いたこともあるけど、メロディーにうまくのらなかったんです。学生の時から国語が得意でなかったので、日本語に対してちょっとしたコンプレックスがあるのかも知れないです。少しでも日本的な要素を入れたいなと思って、"ライスボール(おにぎり)"とか"プラムワイン(梅酒)"って歌っている曲もあります。英語だと一人称になりがちだけど、私、私...って主張が強い歌詞より、朝ベッドの横で「おはようございます」としゃべり出すアラームみたいな曲を作っていきたいなと思います。

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——今後チャレンジしていきたいことはありますか?

アニー 今すぐにでもやりたくてムズムズしていることがあります!それは、脚本、映像、音楽、演技と、自分ができることを全部詰め込んだショートフィルムを作ることです。音楽活動と並行してバーでアルバイトをしてるんですけど、お客さんの人間観察がすごく楽しくて。寂しがり屋の人がいれば、モテ期の人がいたり、喧嘩があったり...。日本人だけじゃなく、海外の人にも共通してわかるような、人間のステレオタイプを描いたフィルムを撮りたいですね。

友人のサポートのお陰で実現したという2ndアルバムリリースパーティは、アルバイト先の常連さんも駆けつけて、アットホームに行われたそう。ちょっぴりイタズラで、ハッピーになれて、じんわり沁み入る、アニーワールド。その世界に仲間入りしてみませんか?

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▲ 『Inside Her Fancy Brain』リリースパーティの様子。

EVENT INFORMATION

今回、インタビューしたannie the clumsyが所属する「Rallye Label」のフェスティバル「ソコカシコ2015」が開催。アニーも出演します!

Rallye Labelレーベル・フェスティバル「ソコカシコ2015」

日時: 10月12日(月)13:00〜(12:00開場)
場所: @DUO/O-NEST/7th Floor3会場同時開催
出演: ショコラ&アキト、hirohisa HORIE、イトケン、宮内優里、sugar me、YeYe、LUCKY TAPES、CONCERT、annie the clumsy、ザ・なつやすみバンド 他
料金: 前売 4,000円/当日 4,500円(共にドリンク別)
お問い合わせ: TSUTAYA O-NEST
TEL: 03-3462-4420

PROFILE

annie the clumsy(アニー・ザ・クラムジー)/2011年よりバンド「Flight of the Conchords」に影響を受け、宅録で音楽制作を始める。YouTubeやSoundCloudにて主にウクレレを使用した楽曲の発表を続け、2012年、EP『Annie the clumsy vol.1』を自主リリース。2014年同作を元に1stアルバムをレーベル「GOTOWN RECORDS」より初の流通盤『from my messy room』を発表。今年の夏に「Rallye Label」から2ndアルバム『Inside her fancy brain』をリリース。CMソングの歌唱・作詞作曲等に携わりながら都内を中心に活動。 annietheclumsy.blogspot.jp