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写真:在本彌生 文:兵藤育子

自然崇拝の聖地を巡る2 和歌山県・那智勝浦エリアの情報はこちらから!
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REPORT

伊勢から熊野へ 自然崇拝の聖地を巡る旅1 和歌山県・新宮エリア

「伊勢へ七度、熊野へ三度」といわれる所以
紀伊半島南部に広がる熊野は、古来、神仏に最も近い特別な地として崇められてきました。熊野といえば雄大な自然。山や樹木、岩、滝、海など自然こそが畏怖すべきものとして、信仰の対象になってきたのです。一方で、熊野の北には日本の神々の最高峰とされる伊勢神宮が鎮座していますが、天皇家の祖先を祀っていることから、平安時代は皇族以外の参拝が許されていませんでした。

熊野は訪れるのがはるかに困難だったため、最果ての地、つまりは極楽浄土とみなされ、修行の地となります。そして老若男女はもちろん、浄不浄、信不信を問わず、あらゆる人を受け入れたことから、中世以降、「蟻の熊野詣で」と称されるほどの賑わいを見せるように。現在、日本全国に熊野神社が3000以上あるのはこうした信仰の現れで、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の総称である熊野三山が、その本社となっています。江戸時代になると伊勢神宮の参拝が庶民に許され、お伊勢参りが大ブームに。"弥次さん喜多さん"でおなじみの『東海道中膝栗毛』では、信心深さを例えて「伊勢へ七度、熊野へ三度」と詠われるほどの人気ぶりでした。

熊野の魅力を3回に分けて紹介していくこのシリーズで最初に取り上げるのが、伊勢から熊野へ入った場合、最もアクセスしやすい新宮エリア。熊野速玉大社が鎮座する新宮は、佐藤春夫や中上健次など日本を代表する文人を輩出した地です。そんな自然と文化の融け合った新宮の魅力を、たっぷりお届けしていきます。しかも2013年の今年、伊勢神宮では20年に一度の式年遷宮が行われます。社殿を造り替え、御神体を遷す特別な儀式のある年に、昔の人々の旅に思いを馳せながら、伊勢から熊野を巡ってみてはいかがでしょう。

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熊野の自然崇拝を象徴する神社
初めて訪れた人は「なぜこんなところに......」と、異様な光景を前に呆然と立ち尽くし、聖地と言われるゆえんを全身で感じることになるはず。熊野速玉大社の摂社である神倉神社は、それくらい強烈なインパクトを与えてくれます。その理由は「ゴトビキ岩」と呼ばれる御神体。ゴトビキとは熊野の方言でヒキガエルを意味し、断崖絶壁の上に鎮座する巨岩は、今にも飛び立ちそうな格好で天を仰いでいます。さらにはこの御神体までのアプローチがダイナミックで、限りなく自然の状態に近い538段の急な石段を、息を切らしながら上ることに。毎年2月6日に行われる神倉神社の例祭「お燈まつり」では、足場が良いとは言いがたいこの石段を、白装束に松明を持った男たちが一気に駆け下りるそう。足をすくませながら石段を下りた身としては、耳を疑うような話ですが、旅の途中で出会った地元の男性が、お燈まつりに参加したときの武勇伝を誇らしげに語ってくれた姿が、とても印象的でした。

神倉神社 和歌山県新宮市神倉1-13-8

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ナギの御神木は縁結びのご利益あり
神倉神社から1キロほど離れたところにある、熊野三山のひとつ熊野速玉大社は、緑に囲まれた朱塗りの社殿がとても鮮やか。主祭神の熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)は、伊奘諾尊(いざなぎのみこと)と伊奘冉尊(いざなみのみこと)とされています。鳥居をくぐり、玉砂利の敷き詰められた参道を歩いていくと、目に飛び込んでくるのがナギの大木。高さ20メートルにもおよぶこのナギは日本最大といわれ、推定樹齢はなんと1000年。熊野権現の御神木として、熊野詣でをする人々は葉や小枝を懐に入れたり、笠に差したりすることで旅の無事を祈ったという言い伝えがあります。ナギの葉は少々変わった構造で、普通の葉のように真ん中に主脈がなく、葉脈の方向に引っ張ってもなかなかちぎれないことから、男女の縁が切れないように葉をお守りにする風習があったそう。現在も縁結びの神様として、多くの信仰を集めています。

熊野速玉大社 和歌山県新宮市新宮1番地 TEL.0735-22-2533

Recommend spot

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ローカル喫茶店で新宮の日常に触れる
地元の人に愛されている、アットホームな喫茶店。日替わりランチでも人気のハンバーグ定食(写真)は、800円でボリュームたっぷり。熊野牛を使用していて、ソースも自家製です。お肉を使ったメニューがほとんどですが、お肉が苦手な人のために裏メニューとしてお魚も用意しているそう。ご主人のお兄さんは、新宿にある老舗ジャズ喫茶DUGを経営する写真家の中平穂積氏で、店内には有名ジャズミュージシャンの写真がずらり。奥様の手作りケーキも絶品です。

喫茶ナカヒラ
和歌山県新宮市井の沢8-10 TEL.0735-23-0333 
営業時間:8:00〜19:00 定休日:第1・3日

地元の人から愛されるローカル新聞
「熊野新聞」はもともと「南紀州新聞」というローカル紙でしたが、愛着のある地名をタイトルに使いたいという、副社長・寺本一生さんの強い意向で、2010年に全面リニューアル。新宮出身の寺本さんは、東京で写真ギャラリーのオーナーをしていたときの人脈を生かし、新聞のロゴデザインを仲條正義氏に依頼。ぱっと目を引く美しいロゴの新聞を、記念に買っていく人も多いようです。今後は、新聞と雑誌を合わせた感覚で身近な情報を発信しながら、著名人を熊野に呼んでワークショップを開催するなど、文化的素地のある新宮らしい企画を検討していきたいそう。

n20130110_ew_7.jpg熊野新聞
和歌山県新宮市新宮3563-4 TEL.0735-22-8080
kumanoshimbun.com

INFORMATION

地元の観光情報はここでチェック!

新宮市観光協会 www.shinguu.jp

ACCESS

新宮エリアへのアクセス

●飛行機&鉄道
東京(羽田空港)から、JAL南紀白浜便で南紀白浜空港へ(約1時間。1日3便)。バスまたはタクシーでJR白浜駅へ。白浜駅より紀勢本線、新宮駅下車。もしくは、南紀白浜空港からレンタカーを利用。南紀白浜空港正面にニッポンレンタカーの南紀白浜空港営業所あり。
JAL www121.jal.co.jp
ニッポンレンタカー南紀白浜空港営業所 TEL.0739-42-4344

●高速バス
東京・池袋から、南紀勝浦駅行き高速バスで、三交新宮駅前で下車。
三重交通 www.sanco.co.jp

和歌山県の観光について
和歌山県観光連盟 TEL.073-422-4631 
www.wakayama-kanko.or.jp

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