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豊かな緑に囲まれて、自然と寄り添った丁寧な暮らしが
当たり前のように根付いている岐阜県飛騨市。
先日参加したケチャップ&タバスコづくりのワークショップをきっかけに、
最近、都会からの移住者も増えているというこの土地を訪れました。

前編では飛騨古川駅から少し離れた里山が広がる地域を訪れましたが、
後編では駅周辺をご紹介します。

写真:福井 馨(POINTER

REPORT

飛騨古川で出合った"当たり前"の暮らし [後編]

訪れたのは飛騨古川駅から徒歩10分ほどの場所にある、古民家を改装したカフェ「壱之町珈琲店」。この場所は、地元の人々はもちろん、飛騨に移住してきた人々も自然と集まる憩いの場になっているそうです。

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▲写真左から白石実果さん、オーナーの森本純子さん。

古民家の心地よさを体感できる、くつろぎの空間
「壱之町珈琲店」がオープンしたのは14年前。「古民家がどんどん駐車場になって、歯抜け状態になるのが寂しかったから」と、オーナーの森本さんはオープンのきっかけを話してくれました。「できるだけ長い時間、この空間に滞在してもらって、古民家の心地よさを体感してほしかったんです」。飲食業は未経験だったものの建築家の友人に相談しながら、くつろげる空間を作り上げていったのだそう。入り口から入ってすぐにある大きなテーブルも、オープン当初は悩みの種だったといいます。「飛騨の方は大きなテーブルに相席することに抵抗があったようで、初めはお客様も戸惑っていました。何度この大テーブルを分解しようと思ったことか(笑)」。今では飛騨市に移住し、新しく暮らし始めた方たちが、ゆるやかに繋がるきっかけの空間にもなっているようです。


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▲ほっとひと息つけるような、広がりのある空間です。
壱之町珈琲店|岐阜県飛騨市古川町壱之町1-12 TEL:0577-73-7099 
営業時間:10:00~17:00 定休日:火曜日

昔ながらの営みが色濃く残る場所
ここで働く白石実果さんも、移住者のひとり。地方出身者にはよくあることだと思いますが、長野で生まれ、大学進学で上京した彼女は、卒業しても当然のように東京に住んでいたといいます。彼女の移住のきっかけは結婚。とはいえ、旦那さまも移住者なので、飛騨での暮らしには驚きがたくさんあったのだそう。「ここではみんな、食料を当たり前のように自分たちで作っているんです。東京では野菜は買うものでしょう? でもここでは違う。夏には段ボールいっぱいの野菜をお裾分けしていただくこともあって、消費する場所から生産する場所に来たことを実感する毎日です」。

「昔からの文化も色濃く残っています。たとえばお酒。私と夫は共通通貨だと言っているんですが、お礼をするとき、おめでたいとき、お詫びをするときには風呂敷にお酒を包んで持っていくのが基本。東京にいるときはお菓子でも何でもよかったけど、ここではわかりやすくお酒なんです。ファッションではない風呂敷の文化が残っていることも格好いいですよね。夏は5時になると打ち水を当然のようにする。“大作戦”にしなくても当たり前にしてるんです」。

夏休みには家先に「遊び中」「勉強中」という札がかかる家もあるという飛騨市。「勉強中」は、誘わないで、という意味。携帯電話で「今から行ってもいい?」じゃない、昔ながらの営みが残っている土地なのです。「でも不思議とfacebookは普及しているんですよね。年配の方もやっています。新しいものを拒絶するわけではなく、楽しいものに関しては積極的に、柔軟に取り入れているところもいいなぁと思います」。
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カフェを出たあと、街を散策してみました。白壁の土蔵に沿うように流れるのは瀬戸川用水路。商店や民家の軒先には、季節の草花が生けられています。これは誰かに強制されているわけではなく、地元の人々が自然にやっていることなのだとか。こちら(上写真右)は、“雲”と呼ばれる軒下の小腕に施される装飾。家を建てた大工さんそれぞれが持つ、独自の紋章のようなものです。街を歩くと随所から、ここに暮らす人々の土地への愛情が伝わってくるようでした。

飛騨市には豊かな自然があり、季節に寄り添って丁寧に暮らす人々がいます。それは観光客や新しくこの街に住み始めた人たちにとっては、新鮮で感動すら覚えるほど魅力的なもの。でも昔から暮らす人々にとっては“当たり前”のこと。“当たり前”のことを“当たり前にすること”がどれほど難しいか。飛騨市は、都会に暮らす私たちが忘れかけている大切なことを、思い出させてくれる場所でした。

INFORMATION

飛騨市で開催! 暮らしとつながるイベント情報

◎しめ縄づくり
日時:2013年11月30日(土)13:00~15:00
会場:飛騨市図書館2F にじの広場(岐阜県飛騨市古川町本町2-22)
参加費:¥1,000
申込先:申し込みフォームよりお申し込みください。
問い合わせ:飛騨市役所企画課(TEL.0577-73-6558)
※イベント詳細はこちらから

◎花餅づくり
日時:2013年12月21日(日)13:00~15:00
会場:飛騨市美術館(岐阜県飛騨市古川町若宮2-1-58)
参加費:¥1,000
申込先:申し込みフォームよりお申し込みください。
問い合わせ:飛騨市役所企画課(TEL.0577-73-6558)
※イベント詳細はこちらから

◎三寺まいり~ゆらめく炎に、あなたの想いを込めて~
日時:2014年1月15日(水)16:00~21:00
会場:飛騨古川市街地
飛騨古川で300年以上続く伝統行事。その昔、若い娘たちが着飾って巡拝し、男女の出会いが生まれたことから、縁結びが叶うおまつりとして知られるようになりました。当日は、着物のレンタルサービスもあり。町中に灯されたろうそくが生み出す幻想的な雪の世界を、和装姿で歩いてみませんか。

※そのほか今後も、漬物ステーキづくり、猟師さんのマタギの話&しし汁を味わう会、裏山スノーシューなど、冬の飛騨暮らしを体感できるワークショップを開催予定です。ワークショップ情報は随時、「飛騨の暮らしとつながるサイト~飛騨の日常~」で更新されているので、チェックしてみてください。


ACCESS

飛騨市へのアクセス

鉄道利用の場合......約4時間20分
[新幹線のぞみ] 東京~名古屋→[JR特急ワイドビューひだ] 名古屋~高山→[JR高山本線] 高山→飛騨古川

バス利用の場合......約6時間5分
[濃飛バス・京王バス] 新宿~高山→[濃飛バス・JR] 高山~古川駅前

自動車の場合......約5時間10分
[中央・長野自動車道] 調布IC~松本IC→[国道158号線・国道41号線] 安房峠~飛騨古川

飛行機の場合......約2時間40分
[ANA] 羽田空港~富山空港→[富山地方鉄道(バス)] 富山空港~富山→[JR特急ワイドビューひだ] 富山~飛騨古川

飛騨の観光、暮らしの情報はこちらから
飛騨の旅 www.hida-kankou.jp
飛騨の日常 www.hida-kankou.jp/life


飛騨産のトマトを使ったケチャップ&タバスコづくりのワークショップの様子はこちらから。
「飛騨古川で出合った"当たり前"の暮らし[前編]」はこちらから。