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ヨーガン レール<br>ゴミから生まれた、美しいプロダクト[前編]

ヨーガン レール ポートレート写真(上):高木由利子 
写真(本文):田原あゆみ 文:草深早希

REPORT

ヨーガン レール
ゴミから生まれた、美しいプロダクト[前編]

1971年に来日してから、40余年を日本で暮らしてきたデザイナー、ヨーガン レールさん。2014年、移住先の沖縄・石垣島で惜しくも逝去したレールさんがこれまで作り上げてきたもの、そして、自然を敬い、もう一歩踏み込んだ暮らしを実践してきたその姿は、私たちにさまざまなことを教えてくれました。 

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▲2015年秋冬に展開される〈ババグーリ〉の雑貨。表情豊かな布地と、自然のカタチを写した陶器。

レールさんのブランドは、綿、絹、麻などの天然素材を使い、染めにも可能な限り天然の染料を取り入れた衣服を展開する〈ヨーガン レール〉と、日本と世界で受け継がれる手仕事の技術を紡ぐ衣服や器、家具などを展開する〈ババグーリ〉。自然の中に存在するありとあらゆるものの魅力を引き出し、デザインとしての美しさを追求する、その揺るぎないものづくりは、1972年に設立された〈ヨーガン レール〉のエシカルなファッションアイテムと、2006年に立ち上げた〈ババグーリ〉の雑貨を扱うライフスタイルストアとして確立してきました。そして、自然派食品に意識の高い人々から一目置かれる〈ヨーガン レール〉の社員食堂。無農薬の野菜を中心とした、栄養バランスの行き届いた食事が日々提供される環境は、1冊の本(高橋みどりさんの著書『ヨーガン レールの社員食堂』)が誕生するほど、多くの人々の心を魅了しました。

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▲社員食堂でも使われている〈ババグーリ〉の代表的なスツール。長年使い続けることで生まれる木の経年変化を活かし、アンティークとして使い続けられるよう願いが込められています。

レールさんが沖縄・石垣島に住居を構えたのは、1990年代後半のこと。木をなるべく伐採しないことで環境へ配慮した「ヨーガン レール農場」では、社員食堂で提供するお米や野菜、さらに、ショップで販売するハーブティーなどの農作物を収穫しました。

"沖縄にある海辺の家で1ヶ月の3分の1を過ごすようになって、15年になります。畑を耕し、創作のアイデアを練る合間に、犬の散歩と気分転換を兼ねて家の前の浜辺におりるのが日課ですが、その度に悲しみと怒りが綯い交ぜになったような複雑な気持ちになるのです。"
                                 ーヨーガン レール

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発泡スチロールの切れ端、ペットボトルのふた、洗剤の容器......浜辺に流れ着いた大量のプラスチックゴミ。その光景は、「環境を汚さない、土に還る素材で、自分にとって必要不可欠なものをつくりたい」という考えを実践してきた彼にとって、いたたまれないものでした。

そんな思いから、浜辺のプラスチックゴミを拾い集めはじめたレールさん。ゴミを色分けし、手作業で作られたカラフルで美しいランプシェードは、自然への畏敬の念を込め取り組んだ、彼の最後のプロジェクト。後編では、そのプロジェクトの一部を抜粋してご紹介します。

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※[後編]は、こちらから

PROFILE

ヨーガン レール(Jurgen Lehl)/1944年、ポーランド生まれ。パリでテキスタイルデザインを学び、1971年に来日。翌年1972年には、株式会社ヨーガン レールを設立。オリジナルのテキスタイルやジュエリー、家具や器など、幅広いデザインを手がける。2006年、環境に配慮し、手仕事のものづくりを大事にしたブランド〈ババグーリ〉をスタート。2014年、永眠。