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平和へのメッセージを込めて<br>オノ・ヨーコ、60年の活動の軌跡を辿る

オノ・ヨーコ 『FROM MY WINDOW: Salem1692』 2002年 顔料/カンヴァス 個人蔵 ©YOKO ONO 2015

協力:東京都現代美術館 文:草深早希

REPORT

平和へのメッセージを込めて
オノ・ヨーコ、60年の活動の軌跡を辿る

1933年東京に生まれ、60年に渡る創作活動や平和運動を通して「自由」「平和」「ウーマン・リブ」などの改新的な考え方を世界へ発信し続けてきたオノ・ヨーコさん。彼女は、幼少期に父の赴任に伴い太平洋を渡り、開戦前に帰国してから進学のため家族とともに1952年に再び渡米するまでの10年間を東京で過ごしました。戦後、主にアメリカ芸術の文脈で語られてきたオノさんの活動を、故郷・東京で改めて考える展覧会『オノ・ヨーコ|私の窓から』が先日11月8日(土)より東京都現代美術館でスタート。

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本展は、戦前すでに国際化していた東京を起点に、音楽教育を受けていた幼少期からアーティスト活動を開始するまでの背景や、1950年代から1970年代の東京での活動、そして、近年発表し続ける作品を通し、近代と現代、日本と海外、美術と音楽と文学をボーダレスに結び、社会へのメッセージを自由な発想で表現してきたこれまでの作品を展示します。

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オノ・ヨーコ『穴』2009 年、弾の貫通した板ガラス、刻印されたテキスト「ガラスの反対側に廻り、穴から覗く」、金属の枠(部分)、個人蔵 ©YOKO ONO 2015

▲ ガラスに銃を撃って穴を空けた作品。国、地域、民族などから起こる、さまざまな対立や考え方を別の角度から考えて欲しいというメッセージが込められています。

展覧会開催のために来日したオノさんは、本展について「『私の窓から』というタイトルをつけたのは、本展が私自身の世界を映しているからです。私が客観的に人生を見て、生きているということもあります。私が今まで生きながらえて来れたのは、どんなに過酷な状況でも、私の中に客観的な心があったからなんです。それが、私の人生の救いになったと思うからこそ、"私の窓"というのは、私にとってすごく大事なものだと思っています。自分に溺れない感覚を持つことが大切なんだと思います」と、年齢を感じさせない凛とした様子で話します。

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▲ 今回の展覧会のタイトルにもなった『私の窓から』というシリーズの作品。幼少期に出会ったというピーボディの絵画は、1692年にアメリカで起きた事件「セイラム魔女裁判」を描いたもの。自身の出来事を、絵画と窓と世界を重ね合わせたメタファーとして、ひとつのパネルに表現しています。

彼女は、日本人女性がアーティストとして画一することが困難な時代から活動を開始し、今なお世界的にコンセプチュアル・アートを先導。日本、アメリカ、イギリスなどグローバルに土地を渡り、私たちが計り知れないほどさまざまな場面に直面してきたその視線は、アートという枠だけにとどまらず、常にその時代に反映される社会へのメッセージとして向けられてきました。一度は目にしたことがあるであろう代表作をはじめ、会場に並べられた数々の作品は、歴史を記録する貴重なアーカイヴであるとともに、アートが社会にどのような役割を果たせるかという重要性を啓示。

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▲ 水の入った器が台の上にいくつも並べられた作品『私たちはみんな水』。器に添えられたアドルフ・ヒットラーやゴータマ・ブッダらの名前が書かれたカードに、人が並んでいるような存在感さえ受けるその作品は、階級や性別を超え、すべての人が平等であるという願いが込められています。

その活動の中でも、1964年に発行され、コンセプチュアル・アートの歴史に残る書籍『グレープフルーツ』のもととなるタイプ打ちされた英文のハガキや、1969年に日比谷野外音楽堂で行なわれたジョン・レノンとのキャンペーン企画「WAR IS OVER! 」、1974年に郡山で行なわれた環境をテーマに掲げたイベント「One Stop Festival」などの貴重な資料や日本初公開作品に注目です。

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▲ 写真左上:東京都現代美術館蔵の『グレープフルーツ』初版本。 右上:『グレープフルーツ』収録作のハガキは、Event、Painting、Music、Poetry、Objectの5つの項目に分け会場に展示。 下:来日したオノさんが、壁に書かれた『VOICE PIECE FOR SOPRANO to Simone Morris』のパフォーマンスを披露。この作品は、会場に設置されたモニターで見ることができます。

日常の中から世界との繋がりを見出し、多角的な視点からモノを考えるという極めてシンプルな作品群。さまざまな時代を生きたオノさんがこれまでに残したその活動の軌跡は、今日を生きる私たちの目にどのように映るのでしょうか。そのメッセージに触れに、是非、足を運んでみてください。

PRESENT

展覧会『オノ・ヨーコ|私の窓から』ご招待券を5組10名様にプレゼント!
応募〆切:11月25日(水)24時
※当選者は鑑賞券の発送をもって発表とさせていただきます。
ご応募はこちらから!

INFORMATION


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オノ・ヨーコ|私の窓から

会期: 2015年11月8日(日)〜2016年2月14日(日)10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
会場: 東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
TEL: 03-5245-4111 (代表)
休館日: 月曜日(11月23日、2016年1月11日は開館)、11月24日、12月28日〜2016年1月1日、1月12日
入場料: 一般 1,200円、大学生・専門学校生/65歳以上 900円、中高生 700円、小学生以下 無料
WEB: mot-art-museum.jp
主催: 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館

20151116_ao_7.jpeg 展覧会図録『YOKO ONO: FROM MY WINDOW』

著者:オノ・ヨーコ、関 直子、松井みどり、ジョン・ヘンドリックス
発行:東京都現代美術館|¥2,250(税込)
※東京都現代美術館ミュージアムショップ「NADiff contemporary」にて販売中!