写真:小原泰広 文:臼井のぞみ
REPORT
新しいチョコレートの味わい方 〜 Bean to Bar チョコレート
みなさんは、“Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)”と呼ばれるチョコレートをご存知でしょうか。これまで私たちが慣れ親しんできたチョコレートは製菓用のチョコレートを加工してできたものですが、近年、新たな潮流を生み出しているBean to Barチョコレートは、カカオ豆の選定から焙煎、摩砕、調合、成形までのすべての工程を一貫してつくられるもののこと。カカオを作物として捉え、異なる産地から仕入れるカカオ豆本来の個性を引き出すこだわりのレシピで丁寧につくられることにより、カカオらしい濃厚な香りと質感のあるとびきりのチョコレートが実現しました。ここでは、このシーズンにおすすめする魅惑のBean to Barチョコレートをご紹介します。
素材の良さを最大限に活かしたチョコレート作りを追求する「Minimal」
2014年、富ヶ谷にオープンした「Minimal」のこだわりは、店名に由来する通り、カカオ豆と砂糖のみを使用した最小限(=ミニマル)のチョコレート作り。シンプルながらも厳選された素材が用いられ、チョコレートになるまでの工程には様々なこだわりが隠れています。石のローラーでカカオ豆を細かく砕く「コンチング」という作業も、あえて練りすぎないことでザラザラとしたカカオの食感をキープ。カカオ本来の香りを引き出します。
▲ 控えめにローストをすることによって果実のような爽やかな味わいを楽しめる「FRUITY」シリーズから、青リンゴのような酸味が特徴の「CITRIC」。FLUITY CITRIC¥1,200|税抜(Minimal ☎03-6322-9998)
世界でも希少な“Farm to Bar(ファーム・トゥ・バー)”を実践する「カカオプリエト
ドミニカ共和国で100年以上の歴史を誇る自社農場を持つ「カカオプリエト」は、製品に用いるカカオ豆や砂糖の栽培からチョコレートができるまでの作業をすべて一貫して行っています。ベースとなる、コクの強いカカオ72%のチョコレートの中には、ナッツやドライフルーツなどがトッピング。食べやすく、満足感のある一枚に。自分へのご褒美はもちろん、素敵なイラストのポストカードにメッセージを添えて、特別な贈り物にも。
▲ 大振りのペカンナッツと甘酸っぱいサワーチェリーがミックス。Pecan&Sour Cherry ¥1,700|税抜(カカオプリエト/クロンティップ krongthip.co.jp/cacao-prieto/)
日本に初上陸したサンフランシスコのファクトリー「ダンデライオン チョコレート」
直接農家へ足を運び、密に話し合いを重ねながら仕入れられる良質なカカオ豆とオーガニックのサトウキビのみを使用。そんなこだわりのものづくりによって、小さなガレージからスタートしたブランドが今ではアメリカ全土で愛されるブランドに成長しました。その海外初となるショップが、今月、東京・蔵前にオープン。敢えて選んだこの地で、本国同様に作られるチョコレートがダンデライオン(=タンポポ)のように親しまれるファクトリーを目指します。
▲ 左から、エスプレッソやシナモンのような濃厚で香り高い後味が特徴。ベネズエラ産¥1,200|税抜 定番のドミニカ産は、カカオと口溶けの絶妙なバランスがアルコールとも好相性。ドミニカ産 ¥1,200|税抜(ともにダンデライオン チョコレート・ジャパン dandelionchocolate.jp)
自分好みの一枚を発見できる、日本のファクトリー「green bean to bar CHOCOLATE」
昨年11月にオープンしたばかりのショップで取り扱うカカオは、豆の鮮度を保つため、通常10℃前後に保たれた個室で品質を徹底管理。コンチングに最大7日間を費やしたチョコレートは、Bean to Barが初めての方にもトライしやすい、滑らかな口当たりを実現しました。展開するのはコロンビアやマダガスカルなど5カ国から厳選したカカオ豆とオーガニックの砂糖のみを使用した11種類のラインナップ。シンプルなカカオ豆本来の味をお楽しみいただけます。
▲ 左から、爽やかな酸味が特徴。マダガスカル70%¥1,500|税抜 酸味の中に甘みが生きた一枚。コロンビア65%ニブス入り¥1,600|税抜 芳醇で濃厚な味わいがポイント。ベトナム・ラムドン70%¥1,500|税抜(すべてgreen bean to bar CHOCOLATE greenchocolate.jp)
カカオ農園との密なコミュニケーションによって生まれた「ウッドブロックチョコレート」
チャーリーとジェシカの夫婦が、ポートランドで初めてスタートさせた小さなチョコレート工場。カカオ豆の品質にこだわる彼らは、カカオ豆を育てる農家と綿密に話し合いを重ね、信頼のおける関係性を築いてきました。9種類の豊富なバリエーションの中には、日本にインスピレーションを受けたというめずらしいゴマ入りチョコレートも。口に入れた時の大きさを計算したという、Bean to Barチョコレートの中でも小振りなサイズで手に取りやすさも魅力的。
▲ 左から、香ばしいゴマの香りが良いアクセント。TOASTED SESAMI ¥800|税抜 ザクザクしたカカオの食感を楽しめる1本。SALT&NIBS ¥800|税抜(GOOD NEIGHBORS' FINE FOODS goodneighborsfinefoods.com)
Bean to Barをいち早く取り入れた、ブルックリンの「マストブラザーズチョコレート」
2007年、リック・マストとマイケル・マスト兄弟がブルックリンでスタートしたこのブランドは、今日のBean to Barムーブメントのパイオニア。いまなお彼らは、南米やアフリカの国々から香り高く高品質なカカオ豆を厳選し、革新的な風味を追求しています。Bean to Barでありながら、驚くほど滑らかな舌触りが実現。チョコレートを包み込む美しい色紙のパッケージにすら、クラフトマンシップのこだわりを感じられる一枚です。
▲ 左から、焙煎したコーヒー豆の香りが口の中に広がります。COFFEE ¥1,800|税抜 カカオにまろやかなバターミルクが加わった余韻を楽しむ1枚。MILK ¥1,800|税抜 カカオ70%のビターな風味にシーソルトが際立ちます。SEA SALT ¥1,800|税抜(MAST BROTHERS/DEAN & DELUCA store.deandeluca.co.jp)
ローフードで “Bean to Bar”が実現。ニューヨーク発の「 FINE&RAWチョコレート」
Bean to Barチョコレートの中でもめずらしいローチョコレートをつくる「FINE&RAWチョコレート」は2007年にスタートしました。ローチョコレートとは低温で加工されたカカオパウダーやカカオバターなど精製されていない甘味を用いたチョコレートのこと。スーパーフードと呼ばれるカカオ豆の高い栄養価が加熱によって損なわれないよう、こだわりの低温製法で丁寧に焙煎。生に近い口当たりを見事に実現。カカオを本来の風味を楽しめる貴重なブランドです。
▲ 左から、マイルドなローストカカオがたっぷり加わり、ローチョコレート特有の苦味がライトに。エルダーウッドスモークソルト¥1,500|税抜 ローチョコレートバーに甘酸っぱいラズベリーをミックス。ラズベリー¥2,500|税抜( LIVING LIFE MARKETPLACE livinglifemarketplace.com)
カカオ豆という品質そのものの魅力に改めて気づかされる、Bean to Barムーブメント。作り手によって、さまざまな味が見出されるこの奥深い世界に、みなさんもお気に入りの一枚を見つけてみてはいかがでしょうか。