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いい顔が集まる、尾道発チョコレート工場<br> 「USHIO CHOCOLATL」の話[後編]

撮影:須藤敬一 文:中野由佳

REPORT

いい顔が集まる、尾道発チョコレート工場
「USHIO CHOCOLATL」の話[後編]

広島・尾道に店を構えるチョコレート工場「USHIO CHOCOLATL」。カカオ豆の仕入れから製造、パッケージまでの行程を自らが行い、チョコレートの美味しさだけでなく、その果敢な行動力とセンスも話題になっています。なぜ男性3人がチョコレートづくりに興味を持ったのか? 「USHIO CHOCOLATL」のチョコレートができるまでの道のりを工場長の中村真也さんに聞いてみました。

※[前編]はこちらから

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——「USHIO CHOCOLATL」の誕生について教えてください。

中村真也さん(以下、中村さん) 僕は漫画『美味しんぼ』フリークで(飲食スペースに100刊を貯蔵!)、以前より漠然と何か飲食で事業がしたいなあと考えていたんです。そんな時、雑誌でNYのチョコレート店「Mast Brothers」(http://mastbrothers.com)の記事に出会いました。カカオを選別してチョコレートにするまでを自社工場でやっていて、おまけにパッケージもかっこいい。食べたら美味しくて感銘を受けました。僕は7年前から菜食主義者でミルクも飲まないんですが、カカオ豆と砂糖だけというシンプルな素材なら、自分も食べられる。しかも、コーヒースタンドやカレー店は美味しい店が既にたくさんあるけど、チョコレート工場はあまりなかったので、「チャンスばい...」と、ぞわっとしたんです。当時、福岡から尾道に移住してきたばかりで一人だと大変そうだなと思ったので、まわりに居た暇そうな人(宮本篤さん、栗本雄司さん)に声をかけました。そうしたらのってきたので、そこから「USHIO CHOCOLATL」がスタートしました。

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▲ 中村さんとともに「USHIO CHOCOLATL」をはじめた宮本篤さん、栗本雄司さん、そして、新たに虹子さんとマコロンさんが仲間入りし、5人で運営中。

——チョコレートづくりはどのように習得したのですか?

中村さん 何から始めたらいいか悩んでいた時に、ちょうど尾道に遊びに来ていたアメリカ人の知り合いがコロラド州のデンバーにあるチョコレート専門店「リチュアルチョコレート」で働いていることがわかったんです。それですぐに連絡をとってもらい、僕がアメリカに行き、工場を見学させてもらいました。チョコレート工場をやろうと思ったのは2012年。当時、今のようにカカオ豆が流通してなくて、作ろうと思っても作ることができなかったんです。そんな時、尾道にある「ハライソ」という喫茶店のマスター吉崎さんに、グァテマラに住む中道夫妻を紹介してもらいました。それで、彼らに協力を得ながらカカオ豆を探しにグァテマラへ。かなりの珍道中でしたね。その他にも、当時中目黒にあったコーヒーショップ「PARKING COFFEE/CACAO WORKS」に飛び込みで行って、店にいた朝日さん(現在は渋谷のチョコレート店「Minimal」の製造責任者)にチョコレートづくりの理論と原理を教えてもらったことも。朝日さんはオープン前に2回も尾道に来てレクチャーしてくださって、本当にお世話になりました。

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——カカオ農園と“ダイレクトトレード”を行った豆の使用もありますよね?

中村さん はい。今ではカカオ豆は商社を経由して流通しているけど、いわゆるJAのようなところで品質の良いものと悪いものが混ざり合ってしまうんです。それだと農園や豆の個性がわからなくなります。なので、僕らは本当に美味しいと思うカカオ豆をつくる農家から、なるべく直接仕入れる努力をしています。カカオ豆は収穫した後の発酵のプロセスが一番重要。農家さんの人となりなど知るために、実際に会うことが大事だと思っています。

——先ほど、宮本さんが現地で直接契約したパプアニューギニアの農園が消滅してしまったと聞いたのですが......。

中村さん そうなんです。僕らが契約したカカオ農園は消滅してパームヤシ畑に変わってしまったそうです。素敵な家族が運営していたので非常に残念ですね。またパプアニューギニアの別の農園も開拓しますし、現在はフィリピン、タンザニア、エクアドル、グァテマラの豆は手続きが進行中です。あと、今年はアジアを中心に攻めて行きたいですね。アジアを強くするのに貢献できたらいいなと思います。

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——カカオ豆と砂糖という原料がシンプルだからこそ、砂糖の選び方も大きく味に影響があるのでは、と思います。また、砂糖はどのようなものを使用していますか?

中村さん 砂糖はクセの少ない有機砂糖を使用しています。少し色がついていますが、美味しい砂糖です。あと、生産量の少なさと高価さゆえすべてのチョコレートには使えませんが、愛媛県の四国中央市で栽培、加工されている黒糖から作った和三盆ならぬ、和ニ盆使用しているものもあります。これは和三盆を作る行程の、水に晒して盆の上で三回研ぐということを二回の研ぎで留めて黒糖の香りやクセをあえて残したもの。カカオ豆の特徴によって使いわけています。

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▲ 現在のチョコレートのラインナップ。上から時計回りに、「ハイチ」、「パプアニューギニア」、「ホンジュラス」、「トリニダード・トバゴ」、「ガーナ」、「ベトナム」。それぞれの味の特徴はこちらにて。

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▲ 新作はトリニダードトバコのカカオ豆とコーヒー豆を融合させた、コーヒーチョコレート。中村工場長が敬愛するグラフィティアーティスト・POPYOIL(http://popyoil.com)とのコラボレーションが実現。

チョコレートを目当てに遠方からやってきた人、仕事後のコーヒー休憩で立ち寄る人、たまたま迷いこんできた人......、山の奥という立地でもお客さんがひっきりなしにやってくる「USHIO CHOCOLATL」。チョコレートづくりへの真摯な姿勢と冒険家的精神で、これからも美味しく愉しく驚かせてくれることに期待です。

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▲ 中村さん、栗本さん、宮本さんとDJ POPの4人からなるHip Hopクルー「Chemical Cookers」のカセットテープやTシャツも販売中。

SHOP DATA

USHIO CHOCOLATL

住所: 広島県尾道市向島町立花2200 自然活用村2F
時間: 9:00〜17:00
定休日: 火曜・水曜
TEL: 0848-36-6408
WEB: ushio-choco.com

※「USHIO CHOCOLATL」全国の販売店舗は、尾道「56cafe」、神戸「BEYOND COFFEE ROASTERS」、尾道「life:style」、尾道「monolom」、尾道「nid」、尾道「 YAMANEKOMILL」、尾道「あくびカフェー 」、尾道「なかた美術館」、尾道「やまねこcafe」、尾道「れいこう堂」、岡山「ONSAYA COFFEE」、岡山「コタン 岡大前店」、愛媛「まなべ商店」、愛媛「田中戸」、大阪「フロレスタファーマーズキッチンCODOMO」、東京「Little Nap COFFEE STAND」、東京「ナポリンチョ