INTERVIEW
大森立嗣監督×岸田繁(くるり)対談スピンオフ!
東京郊外の地方都市まほろ市で便利屋を営むバツイチ男・多田(瑛太)と、突然、多田のもとに転がり込んできた高校の同級生・行天(松田龍平)。奇妙な客たちの依頼をこなしていくうちに、それぞれの人生を見つめはじめる2人の物語を描いた映画『まほろ駅前多田便利軒』。三浦しをんの同名人気小説を映像化した のは、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』で日本映画監督協会新人賞を受賞した大森立嗣。今回、劇中音楽を手がけた、くるりの岸田繁とともに 『ecocolo』55号、ecocolo movie selectionにて本作への思いを語ってくれている。ここでは、本誌では紹介できなかった2人の飲みの席でのエピソードから一部を抜粋。インタビュー の続きは、3月29日発売予定の「エココロ」55号にてお楽しみに!
──2人のもの作りの姿勢は似ているように感じます。お互い、最初からシンパシーを感じてたのでしょうか?
大森立嗣(以下、大森) たぶんね。あまり邦楽は聴かないんですけど、すごく感覚的なところでシンパシーを感じてたんだと思います。仕事をするとまた関係性が変わってきたりしますからね。
岸田繁(以下、岸田) 僕は普段はすごく迷うんですけど、今回はほとんど迷うことなく、夢中で作業してて。早く大森監督と酒を飲みたいと思ってました。
大森 俺もそう思ってた。
岸田 ご近所さんなんで、全部終わってから飲みに行って。で、なんて素敵な酒の飲み方をされるんだろうって思いました。なんかねぇ、僕は飲むのは好きなんですけど。お酒を飲んでゆるんだ時に出てるいいところと悪いところの両方を好きになれる相手は初めてやなぁって。
大森 悪いところって何だよ(笑)。
岸田 途中でトイレに行きはったでしょ? その歩き方がいいなぁって。人となりが。あんまり僕は人のファンにならないんですけど、ファンになったというのとは違うんですけど、この人 がこの映画を作ったというのを噛み締めることができたんです。世の中捨てたもんじゃないなぁって。
大森 トイレ行く時の姿っていうの、俺もよくわかる。対面して飲んでいる時はわりとちゃんと見せなきゃいけないと思ってるんだけど、トイレに行く時はもう無防備になってる。そういう時のことでしょ?
岸田 でも飲んでる時も、同じことは感じてるんですよ。人っていいなぁって。
大森 演出している時もそうですね。自意識が感じられ るうちはおもしろくなくて、見られてない時のような感じで撮りたいというのはあります。見せてるものってガードが入ってますから。行った飲み屋がまた家の そばで、たまたま行きつけの店だったんですよ。「珍しい二人が一緒に来たな」って言われて。でも、どうでもいい話しかしませんでしたよ。仕事の話なんかし なくて。人が知りたいと思ってたんで。
岸田 僕もそうです。バーンとやりはる人やなぁって、最初に会うた時もそう思って。バーンとしたところが衝撃やったというか。
大森 ──(笑)。
岸田 僕もバーンとしたいんですけど、バーンとしにくい世 の中やったり、バーンとできない年齢やったり。これって、バーンとできる人がバーンで作った映画やないなと思うんです。この映画にはやさしさがあって。か わいいと一緒で不気味な言葉ではあるんですけど。正義感とやさしさって全然違うものだと思っていて、正義感とか倫理感とかは時代とか国とかで違ってくると 思うし。一見不思議な世界なんだけど、まほろという場所が現代社会の縮図みたいになってて、そこで生み出されている新しいやさしさがある感じがして。それ はバーンとした人やからできることなのかなって思うし。わーっと思うし、クソーとも思うし。ほんまやぁって思ったりしました。
PROFILE
大森立嗣
1970年、東京都生まれ。03年の『赤目四十八瀧心中未遂』の製作に関わり、05年に『ゲルマニウムの夜』で監督デビュー。10年には2作目の『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』が公開。『まほろ駅前多田便利軒』には、父・麿赤兒、弟・大森南朋も出演している。
岸田繁
1976年、京都府生まれ。96年、立命館大学在学中にバンドくるりを結成。くるりとして映画『ジョゼと虎と魚たち』『リアリズムの宿』の主題歌と音楽、『天然コケッコー』の主題歌を担当している。今作は岸田名義での初の作品となる。
INFORNATION
『まほろ駅前多田便利軒』
配給: | アスミック・エース |
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監督: | 大森立嗣 |
原作: | 三浦しをん |
音楽: | 岸田繁(くるり) |
出演: | 瑛太、松田龍平、片岡礼子、鈴木杏、本上まなみほか |
WEB: | mahoro.asmik-ace.co.jp |
4月23日より、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開