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©Wing Shya / Red Bull Studios Tokyo

文:草深早希


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音楽家・坂本龍一 復帰作品、山田洋次監督映画『母と暮せば』  サウンドトラック制作を綴るドキュメンタリー写真展

終戦、70年。巨匠、山田洋次監督が、井上ひさしさん原作の広島を舞台にした「父と暮せば」に捧げ、長崎を舞台に映画化した「母と暮せば」が12月12日(土)より全国ロードショー。母役に吉永小百合さん、息子役に二宮和也さん、そして、息子の恋人役に黒木 華さんという豪華キャスティングに加え、オーケストラを起用し本作の世界観を見事に表現した、音楽家、坂本龍一さんが手がけるオリジナル・サウンドトラックにも注目が高まります。

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坂本さんは、昨年、中咽頭癌を患い、1年の闘病生活を経て今年夏に復帰。その第1作目となる本作の音楽制作を、世界的に活躍する香港の写真家、ウィン・シャが密着したドキュメンタリー写真展『BEHIND THE TRACKS』が開催されます。今週末、12月12日(土)・13日(日)に「レッドブル・スタジオ東京」で行なわれる第1部では、実際に作曲を行なったスタジオで「母と暮せば」サウンドトラックを聴きながら音楽の生まれる現場を追体験できるという少人数限定の貴重なインスタレーション。12月19日(土)・20日(日)に原宿「BANK GALLERY」へ場所を移し開催される第2部では、第1部に増してより多くの写真が発表予定。

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©2015「母と暮せば」製作委員会

「父と暮せば」で広島を、未完となった「木の上の軍隊」で沖縄を舞台に描いた井上ひさしさんがどうしても書きたいと願いながらも生涯叶わなかったストーリーが、長崎を舞台にした「母と暮せば」でした。広島で被爆し、亡くなった父が幻となって残された娘の前に現れる「父と暮せば」は、心のどこかで原爆投下を生きながらえたことへの悔悟を拭いきれない娘を日々励ます話し相手として、また、時に助言を与える父として、親子の絆を描いたストーリー。そして、本作「母と暮せば」は、長崎で被爆し、さまざまな想いを抱えたまま亡くなった息子が幻となって母の前に現れるという「父と暮せば」と対になるシチュエーションで親子の絆を描いた、山田監督が手がける初めてのファンタジーです。これまで慎ましく生きる人々の姿をリアルに捉えてきた監督自身が、亡くなったはずの息子を亡霊として蘇らせるという新たなクリエイションをCGで取り入れながらも、その根底にあるのは、温かく、心揺さぶられる山田作品ならではの人間味あふれるドラマ。本作について「50年以上に渡りたくさんの映画を制作してきましたが、終戦70年という節目にこの企画に巡り会えたことに幸運な縁と運命すら感じています。井上ひさしさんが、「父と暮せば」と対になる作品を「母と暮せば」という題で長崎を舞台につくりたいと話されていたことを知り、それならば私が形にしたいと考え、泉下の井上さんと語り合うように脚本を書きました」と山田監督は話します。

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©2015「母と暮せば」製作委員会

終戦後、日本を築いた人々が到底想像することもできなかった時代を、今、私たちは歩み始めようとしています。だからこそ、親と子、人と人の結びつきを通し、さまざまな角度から「戦争」と真撃に向き合うことへのメッセージを投げかけているのではないでしょうか。

※12月12日(土)より公開される映画「母と暮せば」オリジナル・サウンドトラックの制作現場を辿る写真展 『Behind the Tracks』の詳細は、こちら写真展特設サイトよりご覧ください。

INFORMATION


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松竹120 周年記念映画「母と暮せば」

監督: 山田洋次
出演: 吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信 ほか
制作・配給: 松竹株式会社
題字: 100%ORANGE
WEB: hahatokuraseba.jp

MUSIC INFORMATION

オリジナル・サウンドトラック『母と暮らせば』
坂本龍一 ¥2,200(税別)|commmons (Avex Music Creative Inc.)