vol.04スペルト小麦
文:岡尾美代子
ロゴ:しまおまほ
突然ですが、私はこんにゃくやタピオカみたいな弾力のある食感が好き。そしてとんぶりや粟といったプチプチしたものも好き。なぜこんな話をするかというと、今回紹介するスペルト小麦はこの2つの食感を併せ持つ食材だから。プチっと、小さなゴム毬みたいな食感(これ私のイメージですが)は、もぐもぐと口の中で噛んでいて楽しいし、よく噛むと甘さもあって素直においしいと思う。......というわけで、これはかなり私好みの食材なのだ。
スペルト小麦とはいわゆる小麦(パンを作るときに使う小麦)の原種にあたる古代穀物。その歴史は古く、古代エジプトでパンの原料として食されていたものが後にヨーロッパに伝わったということが旧約聖書に記されているのだとか(へぇ~っ)。しかもタンパク質、ビタミン、食物繊維を多く含んでいるので健康にも良い食材らしい(ふうむ)。
そして食べ方はというと、これが意外とシンプル。まずは小麦をさっと洗って10分ほど水につけ、それからひとつまみの塩を入れたお湯で同じく10分ほど茹でる(調理の仕方としてはパスタに似ている)。茹であがったら滑りを取るため水洗いしてからザルにあげ水気を切る。これで下準備はOK。
私は塩揉みした野菜とともにオリーブオイルとバルサミコであえてサラダにしたり、具だくさんのスープにいれて雑炊のようにして食べることが多い。まだ食べたことはないけれど、スペルト小麦で作ったパスタやピザ生地、ハード系のパン(天然酵母との相性がいい)もおいしいらしい。売っているのを見つけたら一度食べてみたいなと思っている。
私がスペルト小麦を初めて食べたのはわりと最近のこと。地元のイタリアン・レストランで。茹でたエビと豆と混ぜたライスサラダのようなお料理(白いお皿に上品に盛りつけられていた)で、味も見た目も気に入ってしまった。それで家でも料理してみようと思ったのだ。
ちなみにイタリアではスペルト小麦はfarro(ファッロ)という。ここで紹介しているものには「高原のスペルト小麦」という名前がついていて、何だかロマンを感じるネーミングにもグッとくる(イメージとしては、映画『グラディエーター』の小麦畑のイメージ)。
夏のお昼ごはんに冷えた白のビオワインなんかと一緒に食べるのもいいだろうな。小麦と同じ大きさに切ったいろんな緑の野菜と一緒に。プレートはちょっと大きめのものにして、余白を美しく残して盛って。もしくは渋い色のマットな質感のボウルにストイックに持ってサーブするのもいいかもしれない......なんてイメージがどんどん湧いてくる食材でもある。
問い合わせ:イータリー 代官山店 TEL.03-5784-2736
www.eataly.co.jp
おかお・みよこ/スタイリスト。日々“かわいい”を探して街を放浪しています。(自分のなかでは『母をたずねて三千里』のマルコのイメージで、強風のなかを歩いています)。鎌倉で友人の馬詰佳香と一緒に「ロング・トラック・フーズ」という小さなデリのお店もやっています。「母の友」(福音館書店)での連載(現在は終了)をまとめた本、『雑貨の友』(筑摩書房)を出版しました。