vol.05シロップ
文:岡尾美代子
ロゴ:しまおまほ
ちょっと古い話になるけれど『宮廷女官 チャングムの誓い』という韓流ドラマにかなりハマったことがある。陰謀渦巻く宮中のなか、次から次に起こる事件と、それに立ち向かっていく1人の女性の波瀾万丈に満ちた物語に夢中になったのだが、という王の食事を作る場所が舞台だったということがこのドラマを好きになった大きな理由の一つだったと思う。野菜を切る、切った野菜を和える、そんな料理の作業シーンを観ているのがとてもおもしろかった(付け足すと大きな三つ編みを結った髪型や、チマチョゴリ、エプロンといったその時代の衣装のかわいさにもグッときた)。
今、そのチャングムのノベライズを読んでいるのだけれど(どこまで好きなんだと、自己突っ込み)、ドラマも、そして本でも食材の効能がよく出てくる。医食同源。薬と食品は同様な効果があること、そして日々の暮らしのなかで、体調をコントロールするために何を食べるかが大切であることを、この小説からあらためて学んでいるところだ(何だか言い訳っぽいなあ......)。
すっかり前置きが長くなってしまったが、今回紹介するジンジャーシロップの原料であるショウガもまさに漢方薬。体を温める効果があるのは一般的にもよく知られているし、解熱効果もあって、喉や消化器系にもいいそうだ。チャングムのなかでも(しつこい?)、よく登場する食材だ。王様のために用意した夜食をダメにして、急遽すりおろしたショウガと蓮根を使ってお菓子を作るというシーンもあったりする。
そんなショウガ汁をたっぷり使ったカノカロジンジャーシロップ。アイデア次第でいろんな使い方ができるのもうれしいところ。......といっても基本的には何かに混ぜるかかけるだけなので、いたって簡単なのだけれどね。
炭酸水に入れてジンジャーエールに(これにパイナップルジュースを少し足して、ミントとレモンを加えればハワイアンジンジャーエールになる)。これからの季節にお薦めなのは、温めた豆乳に加える飲み方。こうするとなぜか紅茶を入れなくてもチャイ風の飲み物に変身するのだ。ちなみに私はこれを“チャイ風味”と呼んでいる(笑)。
ほかにもビールに垂らしてジンジャービア(シャンディーガフ)に。フレンチトーストの仕上げに一振り。それからコンビニで売っているような安いバニラアイスとの相性もいい......などなど。きっとアレンジの可能性は果てしなくあるのではないかなあ。
私もその1人だけれど靴下を重ねて履いている「冷えとり女子」や、消化機能が弱っているなと感じている人には、朝1杯の何か温かい飲み物にジンジャーシロップを垂らして飲むのをお薦めしたい。甘くて温かい飲み物は頭を目覚めさせてくれるし、ショウガは体を温めてくれるから。一家に一本、ジンジャーシロップなり。
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おかお・みよこ/スタイリスト。日々“かわいい”を探して街を放浪しています。(自分のなかでは『母をたずねて三千里』のマルコのイメージで、強風のなかを歩いています)。鎌倉で友人の馬詰佳香と一緒に「ロング・トラック・フーズ」という小さなデリのお店もやっています。「母の友」(福音館書店)での連載(現在は終了)をまとめた本、『雑貨の友』(筑摩書房)を出版しました。