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本が繋げる、新しい日韓交流<br>ブックカフェ『CHEKCCORI(チェッコリ)』[後編]

文:中野由佳

REPORT

本が繋げる、新しい日韓交流
ブックカフェ『CHEKCCORI(チェッコリ)』[後編]

 神保町に7月にオープンしたブックカフェ『CHEKCCORI(チェッコリ)』。後編では、『CHEKCCORI』を運営する出版社「クオン」が手がける書籍についてご紹介します。

※[前編]は、こちらから

 海外文学に興味がある人でも、韓国文学に触れる機会は、これまでそうなかったはずです。なぜなら、韓国では日本文学がベストセラーの常連になっている一方で、日本における韓国文学の翻訳出版数は年間20冊を満たないわずかな数だからです。このような現状を受け、クオン代表のキム・スンボクさんは、小説や詩、エッセイなど、2000年以降の韓国で注目される実力派作家の作品を日本語訳で紹介するプロジェクト『新しい韓国の文学』を刊行しました。

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 『新しい韓国の文学』シリーズ第1作となったのは、韓国で最も権威ある文学賞といわれる李箱(イ・サン)文学賞を受賞した女性作家、ハン・ガンさんの『菜食主義者』。「これまでハン・ガンが一貫して描いてきた欲望、死、存在論などの問題がこの作品に凝縮され、見事に開花した」と高い評価を受けた話題作です。
 第2作は、NHKラジオ「まいにちハングル講座」応用編テキストになった、キム・ジュンヒョクさん著『楽器たちの図書館』。音楽にまつわる8つの短編からなるこの作品は、日本人にも通じるユーモアが随所に散りばめられ、「僕からみなさんへ贈る〈録音テープ〉」というコンセプト通り、作家との距離を近くに感じられる、瑞々しい物語です。
 シリーズ最新刊は、純文学からSF、ホラーまで、精力的に作品を発表する若手新鋭作家、チョン・セランさんの『アンダー、サンダー、テンダー』(写真下)。今年7月の来日時には、彼女の作品に共鳴した日本の作家・朝井リョウさんとのトークセッションが行われ、日韓の文学ファンを繋ぎました。『新しい韓国の文学』のアートディレクションを手がけるのは、数々の名広告で知られる寄藤文平さん。カバーには、1冊ごと作品のイメージに合わせて描き下ろされたイラストがデザインされており、大切に読み進めたくなる美しい装丁も魅力のひとつとなっています。

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 最後にご紹介するのは、日韓のふたりの詩人、谷川俊太郎さんと申庚林さんによる作品集『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう』。交互に詩を書き、ひとつの作品に仕上げる対詩24編のほか、対談やエッセイを収録した本書では、文化交流が拡張する傍ら、様々な問題をはらんだ両国関係についても述べられています。"この隣国の詩人は、まるで隣家の主人のように語りかけてくる"。2012年に出版された、申庚林さんの詩撰集に谷川俊太郎さんが寄せたこの一文から感じとれるように、ゆっくりと真摯に耳を傾けたい両者の言葉が詰まった一冊です。

食や音楽、映画だけでない、新しい日韓交流のあり方。そして、もうひとつの視点に触れてみてはいかがでしょうか?

BOOK INFORMATION


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1. 新しい韓国の文学01 菜食主義者

著者:ハン・ガン/きむ ふな訳
出版社:クオン|2,200円(本体価格)



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2. 新しい韓国の文学02 楽器たちの図書館

著者:キム・ジュンヒョク/波田野節子、吉原育子訳
出版社:クオン|2,200円(本体価格)



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3. アンダー、サンダー、テンダー

著者:チョン・セラン/吉川凪訳
出版社:クオン|2,500円(本体価格)



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4. 酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう

著者:谷川俊太郎、申庚林
出版社:クオン|1,500円(本体価格)


※書籍に関するお問い合わせは、ブックカフェ『CHEKCCORI』(☎︎03-5244-5425)まで