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山形・伝統野菜を受け継ぐ農家「森の家」<br>秋の収穫祭[後編]

写真:志鎌康平(アカオニデザイン) 文:草深早希

REPORT

山形・伝統野菜を受け継ぐ農家「森の家」
秋の収穫祭[後編]

山形・真室川で室町時代から代々受け継がれる伝承野菜、じんヱ門もんいも。ホクホクと柔らかく、粘り気のあるなめらかな食感が特徴で、山形県を代表する郷土料理「芋煮」にも使われる里芋です。そんなじんヱ門もんいもをはじめ、数々の伝承野菜を守り続ける農家「森の家」が主宰し、真室川で開催された「芋祭2015」。会場でもてなされた郷土料理をはじめ、真室川の魅力をご紹介します。

※[前編]は、こちらから

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「芋祭」の会場となった「まざれや」は、廃校となったなべ小学校を再活用したコミュニティーセンター。真室川に暮らす人々の生涯学習を推進するために、スポーツやレクリエーションなど地域のコミュニティの場として2013年に新たにスタートを切りました。そんなどこか愛着の湧く会場にズラリと並べられた郷土料理は、この地域で採れる天然鮎や山菜、野菜など素朴な素材の旨味を最大限に引き出した"おふくろの味"。この日のために地元のおばあちゃん、おじいちゃんらが一丸となり「芋祭」に参加する全員にもてなす料理を作りました。

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▲ 話しているだけでパワーを貰える、最高に元気なおばあちゃんたち。手に持った郷土料理は、左からやたら漬け、しめ、伝承野菜のカラトリ芋の茎を使った炒り物。

「真室川に伝わるほとんどの郷土料理が保存食になっています。山菜が芽吹く春になるまでは、夏、秋に採れるほとんどの野菜を塩蔵させるか乾燥させるかします」と、料理をもてなすおばあちゃん。塩蔵とは、食材を塩に漬けて長く保存すること。雪国だからこその食育が行き届いた真室川の郷土料理から、家庭で実践しやすいふたつのレシピをご紹介します。

RECIPE

20151022_li_11.jpgやたら漬け

様々な野菜を混ぜて合わせ塩漬けすることに料理名が由来する"やたら漬け"。塩で漬けると野菜を春まで保管できるため、夏に採れた野菜を冬期間のために漬けておきます。今回の食材は、夏野菜と大根を混ぜ合わせました。

1. きゅうり、なす、赤カブ、赤ピーマン、みょうが、水菜、大根を一口大にカット
2. 適量の塩と野菜をよく揉み込む
3. 樽または大きめの容器に移し、3日間塩漬けをする

20151022_li_12.jpg芋煮

「いちばん美味しいのは、"孫芋"と呼ばれる小さな芋」と、1年を通して芋煮を食べるという「森の家」のおばあちゃん。食卓に欠かせない農家のレシピを教えてもらいました。

1. 里芋、ねぎ、こんにゃく、牛肉をカット
2. 里芋はあらかじめアク抜きをしておく
3. 沸騰させたお湯に、醤油、砂糖、みりんを入れる
4. 里芋、牛肉、こんにゃく、なめこを入れ、自分の口に合うよう味付けをする
5. 煮立ってきたら、ねぎを入れてできあがり

※「森の家」HPでは、こだわりの食材がセットになった「森の家の芋煮セット」を販売中!

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▲ 「芋祭」を主宰する「森の家」20代目・佐藤春樹さんと、妻・衣利子さん。そして、夏に生まれた第一子・勘太くん。この会場は、ウェディング写真の撮影をしたふたりの思い出の場所。

春樹さん夫婦が暮らす農家民宿「森の家」は、築150年以上の古民家を山形にある井上貴詞建築設計事務所がリノベーションを手がけ、2015年グッドデザインアワードで見事にグッドデザイン賞を受賞した自宅兼ゲストハウス。伝承野菜を受け継ぐ農家夫婦が現代的な古民家暮らしを実践するだけでなく、様々な地域から食や農に関心を寄せる人々が訪れ、真室川の地域住民とともに地元の食や手仕事に触れる機会を生みだす新たな交流の場として使われています。

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▲ 写真は、長男・勘太くんが生まれる前に農家民宿「森の家」で撮影されたもの。

春樹さんは、生まれも育ちも真室川町。「山々に囲まれた真室川町では、香りが良く肉厚な質の良い山菜やキノコが豊富に採れます。山形県最北部に位置し近代化が遅れているので、多くの伝承野菜や伝統芸能が残されているだけでなく、手つかずの美しい自然や巨木も沢山あります」と、この地域の魅力について話します。伝承野菜をはじめ、真室川町に受け継がれる暮らしの風景は、後世に残すべき町の財産ではないでしょうか。

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農家「森の家」を中心に、イベントを手伝う町の若者、郷土料理の仕込みに奮闘するおばあちゃん、おじいちゃんが一体となる「芋祭」では、そこに集まる人々の生き生きとした活動力に触れるとともに、真室川に深く根ざした文化を体験することができました。

PROFILE

森の家(もりのいえ)/山形県真室川町で伝承野菜を育てる農家。「森の家」の畑は、電線や下水などが一切通ってない、大谷地という名の広い農地にあります。農家民家では、真室川の地域に伝わる食と農の文化を伝えるとともに、地元住民と交流できるスペースを提供。2015年グッドデザイン賞を受賞しました。morinoie.com