“北欧料理とはなにか”をストイックに突き詰め、息を飲むほど美しい一皿が世界の人々を魅了するデンマーク、コペンハーゲンのレストラン「noma（ノーマ）」。2003年にオープンしてからこれまでに、英国のレストラン誌が選ぶ「世界ベストレストラン50」のNO.1を4度受賞し、2015年期間限定で東京に出店したことが世界的に大きな話題を集めたその功績には、当時弱冠25歳にして「ノーマ」を創業したシェフ、レネ・レゼピのひたむきな努力と挑戦がありました。次世代の食のエンターテイナーを目指し、世界各国から集まる若きシェフと、厳格なまでにそのスタイルを貫き通すレネ・レゼピを4年間に渡り密着したドキュメンタリー映画『ノーマ、世界を変える料理』が4月29日（金）より新宿シネマカリテほか全国順次公開中。

厳しい自然環境から美食とは無縁の地とされてきた北欧でレネが目指したのは、その土地の食材にこだわる料理。デンマークの広大な自然の中に存在するまだ知られざる食材との出会いを求め、一般的には用いられない生きた蟻を拾い、道端に咲いたバラの花を摘み、苔までをも採集するハードコアな食のスピリットに触れる本作では、素材の美味しさを最大限に引き出されたそれぞれの食材が美しい料理へと昇華するまでの背景を描きます。ハーブで燻した酢漬けの卵や、カブの器に入った花の蜜の食前酒、花束のような野菜に蟻が歩き回るソース。スクリーンに映し出されるデンマークの美しい自然とともに、それらのレシピを生み出すアイデアの追求を続けるレネの移民として差別を受けてきた生い立ちから「ノーマ」を維持し続けることへの苦闘までを彼自身の哲学を交えながら内面へと迫ります。そして、制作スタッフが密着した4年の間に起きた、ノロウィルスによる食中毒事件によるNO.1の座からの転落。これは、世界一のレストランを知るための単なるドキュメンタリーでなく、世界の舞台を目指したひとりのシェフが北欧の食に対する葛藤と立ち向かう姿を起承転結に描いた感動的な物語です。

本誌66号「もてなす人々」では、コペンハーゲンにある新進気鋭のレストランと食事情を18ページに渡り特集。本編と合わせてお楽しみください！